2021年 09月 19日
生きている原発危険神話 |
池田信夫「原発『危険神話』の崩壊」(PHP新書)読了。
前半の原子力への反対派が挙げていた危険性について、根拠がないことを事例を挙げながら、解き明かしていくところは良。チェルノブイリ事故を含めて、放射線障害による犠牲者が数十人規模であり、発電電力量当たりに直すと、原子力が最も安全な電源である事を客観的に述べている。
巷の危険性を煽る言説が、ハザードと確率から導き出されるリスクを無視した暴論であることも良く分かる。
しかし、後半、電力自由化を進める言論には違和感がある。
電力業界が政治力で自由化論議を潰してきた、というが、論議に合理性が無く、政策論議として潰れていたのではないのか(現在の自由化の惨状を見ても)。
現に、池田氏は電力自由化で電気料金が下落したり、設備が増強された事例を挙げることは出来ない。(だってそんな「成功事例」等無いのだから)全て電料金の高騰と供給能力の不安定化を招いた。
また、東電を破産整理しても、JALや通信自由化の様にサービス提供は滞らない、とか、仰るが、途切れることなく、系統を維持し供給し続けなければならない、電力系統の特殊性は考慮されてはいない。
送配電を分離し、小売りを自由化すれば、と仰るが、それで新しいサービスは出てこなかった。やはり、投資をして設備を持つことのリスクが大きすぎて、新規参入が進むことはなかった。
再エネのコストが低下して、火力や原子力を下回ったと散々宣伝してきて、なお国家支援を求め続ける再エネ事業者の節操のなさが際立っただけに終わりそう。
本書は2011年の出版だが、10年でここまで明らかになった、ということと納得した。
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by Real-Kid
| 2021-09-19 08:06
| パッケージソフト雑感